障害者雇用に関する議論が盛んになっている今日、障害者を雇用することによって企業が得られるメリットとデメリットは何でしょうか？
また、障害を持つ人たちにとっても、就職によって得られるメリットとデメリットはあるのでしょうか？
この記事では、障害者雇用のメリットとデメリットを障害者・雇用主それぞれの立場で解説していきます。
障害者雇用の障害者にとってのメリット
日本では、障害者雇用率の向上が求められています。
障害者雇用は、多様な人材を取り入れることができ、企業にとって多くのメリットがあります。
障害者雇用を推進することによるメリットについて説明します。
障害者のメリット1：社会参加ができる
障害者が雇用されることで、社会参加ができるようになります。
職場で仕事をすることで、自分の能力を発揮し、社会の一員として活躍できると感じることができます。
障害者のメリット2：経済的な自立ができる
障害者にとって、雇用は経済的な自立につながります。
自分で稼いだお金で生活することができ、自分で選んだことを買ったりすることができます。
経済的な自立は、自己肯定感や自立心を高めることにもつながります。
障害者のメリット3：スキルアップができる
障害者が職場で働くことで、仕事に必要なスキルを身につけることができます。
また、職場での人間関係やコミュニケーション能力なども向上するため、より幅広い社会で活躍することができます。
スキルアップすることで、自分の可能性を広げ、自己実現することができます。
自分がやりたい仕事を見つけ、それを達成することで、充実感や達成感を得ることができます。
障害者雇用の障害者にとってのデメリット
障害者雇用には、障害を持つ人々が職場で働く機会を増やすという利点があります。
しかし、その一方で、障害者にとっては、いくつかのデメリットがあることも事実です。
障害者雇用をすることで生じる障害者にとっての3つのデメリットについて解説していきます。
障害者のデメリット1：雇用されることのプレッシャー
多くの障害者にとって、雇用されることはプレッシャーになることがあります。
これは、障害により、他の人よりも仕事に対するストレスが増えることが原因です。
また、多くの場合、障害者は、雇用主や同僚からの期待に応えるために、自分自身に高いレベルの要求を課すことがあります。
その結果、ストレスや不安を感じることがあり、健康問題を引き起こすことがあります。
障害者のデメリット2：職場での偏見
障害を持つ人々が職場で働くことは、多様性を促進し、職場の文化を豊かにすることができます。
しかし、現実には、障害者に対する偏見が存在することもあります。
例えば、障害者は仕事が遅いと考えられることがあり、他の人と同じ仕事をこなすことができないと見なされることもあります。
これらの偏見は、障害者が職場で差別的な扱いを受けることにつながる可能性があります。
障害者雇用の誤解や偏見をなくすための対策について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
>>障害者雇用はずるい？【誤解や偏見をなくすために】
障害者のデメリット3：経済的な不安定さ
障害者雇用には、経済的な不安定さというデメリットもあります。
多くの障害者は、身体的な制限や社会的な障壁により、就職難を抱えています。
そのため、安定した収入を得られることができないことがあります。
また、障害によって仕事に制限がある場合、収入が減少することがあります。
これは、障害者が生活に必要な支援を受けられなくなることにつながる可能性があります。
障害者雇用の雇用主にとってのメリット
障害者雇用は、社会的責任だけでなく、ビジネス上の利益をもたらすことができます。
障害者雇用のメリットについては、よく知られていますが、障害者雇用が雇用主にとってもたらす3つのメリットについて詳しく見ていきます。
雇用主のメリット1：多様性と包含性
障害者雇用は、多様性と包含性をもたらします。
企業が多様性を促進することで、異なるバックグラウンドや経験を持つ従業員が一緒に働くことができます。
これにより、異なる視点からのアイデアや考え方が生まれ、企業の創造性と革新性が向上します。
また、障害者を雇用することで、企業は包含性を示すことができ、社会的責任を果たすことができます。
雇用主のメリット2：ビジネス成績の向上
障害者を雇用することは、ビジネス成績の向上につながります。
障害者雇用に関する研究によると、障害者を雇用する企業は、同じ業界の競合他社よりも高い利益率を上げる傾向があるとされています。
障害者雇用によって、企業は新しい市場を開拓することができ、顧客やパートナーとのつながりを強化することができます。
雇用主のメリット3：労働力の安定性
障害者を雇用することは、労働力の安定性につながります。
障害者の雇用は、従業員の離職率を低下させ、労働力の安定性を高めます。
障害者は、雇用主に対して忠実で、長期間働く傾向があるため、企業はコストを削減することができます。
障害者雇用の雇用主にとってのデメリット
障害者雇用は、社会的責任として企業にとって重要な問題です。
障害者を雇用することで、企業は社会に貢献し、多様性と包含性を実現することができます。
しかし、障害者雇用には雇用主にとってデメリットもあります。
障害者雇用の雇用主にとっての3つのデメリットについて説明します。
雇用主のデメリット1：コスト
障害者を雇用することは、多くの場合、追加のコストがかかります。
障害者には、彼らのニーズに合わせた設備や設備改修が必要な場合があります。
また、障害者の雇用には、特別なトレーニングや支援が必要な場合があります。
これらのコストは、企業の経費に影響を与える可能性があります。
雇用主のデメリット2：生産性の低下
障害者を雇用することは、生産性の低下につながる場合があります。
障害者は、雇用主が提供するサポートとともに、特別なケアや支援が必要な場合があります。
これらの要因が、生産性の低下を引き起こす可能性があります。
また、障害の種類によっては、仕事を完了するために必要な時間や労力が増加する場合があります。
雇用主のデメリット3：法的責任
障害者雇用には、法的責任が伴います。
企業は、障害者が適切な支援や設備を提供されるようにすることが求められます。
これには、労働法や障害者差別禁止法など、さまざまな法的規制が含まれます。
これらの規制を守ることが、雇用主にとって負担になる場合があります。
障害者雇用にあたり配慮すること
障害者雇用は企業にとって、社会貢献の一環として取り組むべき重要な課題です。
しかし、障害の種類や程度によっては、採用方法や雇用方法などでの配慮が必要となります。
障害者雇用の採用にあたり、次の3つのことに配慮しましょう。
- 採用面接の配慮
- 職場環境の整備
- 福利厚生の充実
詳しく解説していきます。
採用面接の配慮
障害者採用面接で最も重要なことは、個人の能力や人格を正確に評価することです。
面接官は、採用希望者の障害の程度や種類について理解を深め、面接の際に配慮する必要があります。
例えば、聴覚障害者の場合は、聞き取りやすいように質問を繰り返したり、文字で書いた質問を用意したりすることが必要です。
視覚障害者の場合は、面接室の様子を説明したり、必要に応じて誘導することが大切です。
職場環境の整備
障害を持つ人々にとって、職場環境の整備は非常に重要です。
職場には、車椅子での移動が可能なエレベーターやスロープ、点字ブロックなど、障害を持つ人が安心して働ける環境を整備する必要があります。
また、障害者に適した作業環境や、必要に応じた支援を提供することも大切です。
福利厚生の充実
障害者雇用においては、従業員の福利厚生を充実させることも重要な課題です。
障害者独自の福利厚生制度を設けることで、彼らが安心して働ける環境を整備することができます。
例えば、自己啓発のための研修制度や、病気やケガによる休職時の補償制度などが挙げられます。
デメリットしかない？障害者雇用における事例や成功例
日本においても、障害者の就労機会を増やすために様々な取り組みが行われています。しかし、まだまだ障害者雇用に対する認識が低く、雇用者側もなかなか積極的に取り組んでいるとは言い難い状況があります。そこで、今回は障害者雇用において成功を収めている企業の事例を紹介し、その取り組みの意義について考えてみたいと思います。
成功例1：ローソン株式会社
ローソン株式会社は、2013年に障害者雇用の割合が2.0％であったものが、2018年には3.3％にまで引き上げることに成功しました。
その取り組みとしては、全国の障害者雇用支援機関との連携を強化し、求人情報の共有化や障害者の職場見学、採用に関する相談会の開催など、積極的に取り組んでいる点が挙げられます。
また、障害者に対する敬意と尊重を示すために、障害者雇用に関する社内研修を実施するなど、社員の意識改革にも力を入れています。
成功例2：株式会社ジェイアール東日本企画
株式会社ジェイアール東日本企画は、障害者雇用においては、2018年に障害者の割合が4.4％であったことから、障害者雇用促進法に定められた「障害者雇用率3.2％以上」を達成しました。
その取り組みとしては、障害者と一般社員との間でのコミュニケーションを促進するため、社内に「障がい者フォローアップ担当者」を配置するなど、社員の意識改革にも取り組んでいます。
また、障害者の能力を最大限に引き出すために、職場のバリアフリー化や、個々の能力や特性に合わせた適切な業務の配分にも力を入れています。
成功例3：日本IBM株式会社
日本IBM株式会社は、障害者雇用においては、2018年に障害者の割合が2.65％であったことから、「障害者雇用率2.2％以上」を達成しました。
その取り組みとしては、職場のバリアフリー化や、障害者の能力に合わせた適切な職務の配分のほか、障がい者が働きやすい職場環境づくりにも力を入れています。
また、障がい者雇用に対する意識を高めるために、社内に「障がい者雇用推進部会」を設置するなど、社員の意識改革にも取り組んでいます。
障害者雇用のメリットとデメリット：まとめ
障害者雇用のメリットとデメリットを考察した結果、障害者雇用は企業にとっても障害を持つ人たちにとっても、多くのメリットがあるということが分かりました。
障害者を雇用することで企業は、多様性のある職場環境を作り出すことができ、社会貢献という面でも評価されます。
一方、障害者にとっても、自立した生活を送るための経済的な自立や、自己実現のための機会を得ることができます。
しかしながら、障害者雇用にはデメリットもあり、雇用する側も雇われる側も、慎重に検討していく必要があります。
